自然素材の木の家 7つの効果
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こんにちは。かさはらの家朱(じゅ)です。
最近ものすごくびっくりした経験をしました。
1週間ほど前かさはらの家のモデルハウスにご来場してくださった年配のお客様のお話ですが、木の家に入ると体が痛くないので今住んでいるお家の寝室(6畳)の天井だけでも無垢の板にしてもらえないかという相談でした。
10数年前に水害でお家が浸水してその際に内装をクロスにしてからどうも体が痛い、夜も深く眠りにつくことができなく、夜中にトイレ行くのもしんどい。ただ、実家に帰るとその痛みはないとのことで、よく考えると実家は木の家だったと!
もしかしたら家の内装の違いかもしれないので天井でも無垢の板にに変えてみたいとのことでした。
とにかくすぐやってほしいとのことで、すぐ工事の段取りをしてその週末に工事を終わらせました。
翌週の月曜日朝9時ちょうどにそのお客様から携帯がなり、「えぇ?何か施工がまずかったかな?」と思い、電話を取った瞬間、
「ありがとうございます。 寝室の天井を無垢の板に変えてその日の夜からぐっすり眠れました。 10年ぶりですぅ~。 」という少し高揚した声のお電話でした。 その後電話で10年前水害の話から、実家の話、体の話などなど30分ほどお話をしてくださいました。
最後には「命の恩人ですぅ~」まで言われました。 今まで自然素材の良さなどお客様に色々説明をしながらご案内をしていますが、実際ここまでとは正直思いませんでしたので自分自身もびっくりしてどう答えればいいかパニックになりました。
ただ、「そうですか! それは本当に良かったですね!」しか言えませんでした。
その後、次にリビングとキッチンなども工事をしたいという風になりました。
そこで自然素材の木の家の効果について地球の会(後からご説明します)でお勉強したことを思い出しました。
本日は自然素材の木の家が何でいいのかを実際実験データに基づきご説明し、その7つの効果についてご紹介したします。
(少なくとも7つの実験、7つの効果の中で2.睡眠質の向上は先ほどのお客様のおかげで自分の中では正真正銘に証明されました。)
かさはらの家は「地球の会」(国産材を使用した家づくりを行っている工務店が全国レベルで連合した唯一の団体)という団体に入っておりまして全国レベルで活動しています。
本日はその中でトライ・ウッド、安成工務店、九州大学の3者の共同研究の成果をまとめたものをご紹介いたします。
ここに掲載する7つの実験は、平成24年から林野庁の補助金を受け始まった実験で、九州大学箱崎キャンパス内に合成樹脂建材と天然乾燥木材の2つの 内装を持つ建物を建設し、その部屋でヒトを介在した様々な研究を6年間行い、実際のデータを発表したものです。
1.リラックス効果
内装に木材を使用した部屋はいつも同じ香り成分を放つ?
香りは嗅覚を通して感情や記憶を司る大脳辺縁系にダイレクトに作用し、私たちにさまざまな効果を与えると言われています。スギの無垢材は豊富な香りを有しており、その香りの大半を占める成分はセスキテルペン類です。
例えば、スギ無垢材を内装に用いた部屋では非無垢材を内装に用いた部屋に比べて、このセスキテルペン類の平均濃度は最大で4倍以上高く検出されていることが分かりました。
また、香り成分は温度による影響を受けやすいため、暑い夏に高く、寒い冬に低いことが分かりました。
こうした季節による変動はあるものの、経過年数による明らかな香りの減少は確認されず、部屋の中の空気に含まれる木の香りが維持されていることもわかりました。
2.睡眠質的向上
木の家ではよく眠れるという話は本当?
木の家は、心身をリラックスさせる香り成分が豊富で、温度・湿度を調節する効果があることは科学的にも明らかになってきています。
睡眠環境としてもお薦めしたい木の家について、非木材の家との比較試験を行いました。
男子大学生6名(途中で1名中止)(平均年齢±標準偏差:22.0±0.8歳)を対象に、木の実験棟(A棟)と非木材の実験棟(B棟)に各1晩(睡眠時間8時間)宿泊し、睡眠中の脳波、心電図、血圧、脈拍、睡眠時の活動量、温度・湿度を測定し、起床時の睡眠感の評価を行いました。
A棟の被験者の深い眠りは36分多く、浅い眠りは18分少なく、木の内装の実験棟がより良質な睡眠を提供できる空間である事が示されました。
3.調湿効果
木の家には調湿作用がある?
木の家には調温・調湿機能はあるのだろうか?睡眠中の調温機能について、無垢材の家と非無垢材の家で比較しました。
いくつか実験を行いましたが、いずれにおいても実験棟間で室温の差異は見られませんでした。これは調温機能は無い事を示しています。
一方、木の家には調湿効果があるといわれています。具体的には湿度が高い時には湿気を吸収し、乾燥時には湿気を放出します。
そうする事により、湿度に応じた除湿・加湿の2つの働きをします。木の家の調湿機能を調べるために睡眠中の湿度の変化についての実験を行いました。
無垢材の家と非無垢材の家で睡眠中の相対湿度を1時間ごとに調べました。また、季節によって違いがあるかを調べるために夏と冬で実験を行いました。
実験の結果、無垢材の家では非無垢材の家と比較して相対湿度が約10%低値を示しました。木の家に調湿作用があることは、快適性を説明する一因であると考えられます。
4.集中力向上
木の家は作業課題にどういう影響を与えるだろうか?
無垢材と非無垢材をそれぞれ内装に使った2部屋で、パソコン課題(視覚刺激弁別課題)と呼ばれる実験を男性15名・女性15名ずつに受けてもらいました。
この課題は、部屋の中で安静にした状態で椅子に腰かけてもらい、PCモニターに次々とランダムに現れる図(標的刺激・偏奇刺激・標準刺激)を見て、あらかじめ正解であると示している図(標的刺激)の時のみ、マウスを素早くクリックする方法で回答してもらい、その時の誤答率と反応速度を調べたものです。
30分程度の課題をこなしてもらった結果、無垢材を内装に使った部屋では、誤答率が低く(正答率が高く)、反応速度も速いという結果が得られました。このことから、無垢材を内装に使った部屋では、集中力が高く保たれていることが分かりました。
また、部屋に入った印象を答えるアンケート結果では、無垢材を内装に使った部屋でリラックス効果を示唆する回答が得られました。木の内装は、仕事場や勉強のスペースに使われることに向いていると言えそうです。
5.抗菌作業
昔の人の知恵はすごい!杉のお櫃(ランチジャー)と同じ?
私たちの身の回りには、カビや細菌といった目に見えない沢山の微生物が存在しています。中でも食中毒の原因として有名な黄色ブドウ球菌は、人や動物の皮膚、もちろんホコリの中にも存在する、とても身近な細菌です。
黄色ブドウ球菌は食べ物の中で増殖するときにエンテロトキシンという熱に強い毒素をつくって食中毒を引き起こすだけでなく、毛穴に入りこむと肌トラブルの原因にもなる厄介な存在です。
この黄色ブドウ球菌に対する抗菌効果を調べる実験として、無垢材、塩化ビニル素材およびコピー用紙(コントロール)を細かくしたものに菌液を添加して培養する実験を行いました。
それぞれ18時間培養した菌を、生理食塩水で洗い出し、菌が含まれた液を培地に塗ってさらに18時間培養した後、観察されたコロニーの数を比較しました。
その結果、コントロールであるコピー用紙や塩化ビニル素材で培養したものは2000個近くのコロニーを確認したのに対し、無垢材で培養した場合は0~2個しか確認できませんでした。
この実験から、スギ無垢材は黄色ブドウ球菌に対して抗菌効果を示すことが明らかになりました。
6.男女の印象評価
部屋から受ける印象は年齢や性別によって違う?
「無垢材を内装に使った木の家では快適に生活できそう。」誰もが漠然とそう感じるのではないでしょうか?ですが、無垢材の家では人は実際にどのような快適さを感じるのでしょうか?そしてそこに住めば誰もが同じような快適さを感じるのでしょうか?実は研究チームでは、無垢材の家の快適さは「性別」によって、受ける印象がかなり大きく異なることを明らかにしています。
具体的には女性の場合、無垢材の部屋では非無垢材の部屋より「居心地が良い」「落ち着いている」「明るい」といった日常生活には大変重要でかつリラックスに関係するような印象を統計学的に有意に強く感じていることが分かりました。
しかし、男性に対して同じように無垢材と非無垢材の印象を尋ねてみたところ、明確な差異は見られませんでした。何故女性だけが無垢材の快適さを「居心地が良い」「落ち着いている」「明るい」と的確に評価できるのか。この理由は未だ解明されていません。
しかし少なくとも無垢材の快適さを日常的に用いる言葉ですぐに感じて表現することには女性の方が鋭敏なようです。当然ながら、男性が無垢材の部屋の快適さをどのように感じ取っているのかももちろん重要な課題です。今後の研究では男性にとっての無垢材の快適さをどのように調査すれば詳細に明らかになるのかを検討する予定です。
また、青年および成人期だけではなく、学童期・高齢期の方々にとっての無垢材の部屋の快適さがどのように感じとられるのかもまだまだ未解明です。
様々な年齢性別の人々にとって、無垢材を内装に用いた部屋はそれぞれどのような快適さを感じさせるのか?このことを明らかにすることで無垢材の良さはもっと多くの人々に広まり伝わるはずだと研究チームでは考えています。
7.認知症の抑制
木の部屋では介護が楽になる?
「人生の最後まで健康に過ごす」ためには、日常生活に影響のない「健康寿命」を延ばすことが重要です。
身体の機能低下や認知症などの発症の予防を考えた時、住環境の工夫も、個人で調整できる重要な因子です。
木の家の快適さが、認知機能の維持・向上に効果的かどうかを調べるために、高齢者施設での比較試験を行いました。
高齢者施設を利用する高齢者10名(平均年齢±標準偏差:78.1 ±7.3歳)を各5名(途中で1名中止)、無垢材群と非無垢材群に分け、各3か月生活してもらい、居室の違いによる対象者の認知機能の変化を比較したところ、無垢材群の1名において、認知機能、記憶機能の双方が改善しました。
人間の記憶は、大脳辺縁系の中にある「海馬」という部分が司っていますが、海馬に直接的に電気信号を送れる唯一の感覚が嗅覚であるといわれています。
海馬での神経細胞の発生を促進することで、認知機能が改善したという報告もありますので、木材の主要な揮発性成分が多く含まれる無垢材の部屋では、木の香りによって同様の効果がみられたものと推察されます。
認知症予防効果については、これからもさらに検証を続けていく予定です。
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